アマガミSS 第四話 レビュー (後)


第4話「レンアイ」(前) 目次

森島はるか編 最終章 「レンアイ」(承前)


「私のこと、好きじゃないの?」「す、好きですけど……」
「好きなら思わず覗いちゃうもんじゃないの?」「いや、それは、どうですかね……」

ちょっと長くなりすぎたので一区切り入れました。アマガミSS第4話レビュー、後半です。


「わからない」
「先輩……?」
「どうして、もう一度、告白してくれないの? 何度でも告白するって言ってくれたのに。私……」


「私は君が好きなの!大好きなの!」


「先輩……」
「私、ずっと待ってたのに……ずっとずっと待ってたのに!」

なんか喋りましょうよ。

あっ、うん! あっあっ、すみません!


「もう、嫌われちゃったかと思って……
諦められちゃったのかと思って……さびしくて、不安で……」


「そんなこと、ないです」
「でも、わからないの……。私、こんなに人を好きになったことなんて無いんだもん。
誰にも渡したくない人って、初めてなんだもん」


「すみません……。僕がもっとちゃんとできたらよかったのに。ちゃんと告白もできないような僕で、先輩はいいんですか?」
「ううん、君の告白はとってもステキだった。二回目の告白の時、人に告白されて、初めてドキドキしたんだから……」


「でも、だから自分の気持ちを君にちゃんと伝えるには、どうしたらいいのか、わからなくて……
私のほうこそ、ちゃんと告白もできなくて、橘くんに呆れられちゃうんじゃないかって……」

だから、なんか喋りましょうよ。

あっ、うん! あっあれっ、今ぼく黙ってました? ごめんごめん!

ほんまにあれよな。海の上の山が~とかどうでもよくなってきたよな。

「いいんですよ」


「……?」
「先輩はそのままで、僕が好きになった森島先輩は、そういう人だと思います」


「今度からは僕がちゃんとしますから…だからもう泣かないでください」

ええー、そんな話やったっけ?

いやあ、どうでしたっけ……。


…………

はるか、って呼んで。

うひょう!

いつまでも「先輩」じゃ嫌。

呼んでくれたら、もう泣かないから。

「……はるか。」

ふふ……。


「よくできました」

ふんぬおおおおーっ! うおおおおーっ!


「好きだよ。ずっとずっと一緒にいたい」
「私も好きよ。……大好き!」

バスタオルがパラリ! そこでパラリと床へ!!

落ちませんよ。


「キスして。そのまま、離さないで……」

落ちろォーーーー!!!!

うおおおおおおおーー!! うおおおおおおおおおーー!!

というわけで森島はるか編最終章「レンアイ」、クライマックスのシークエンスを丸々ご覧頂きました。いかがでしたでしょうか。

ほとんどフィルムコミックみたいになってたよな。これはちょっと怒られても言い訳できひんかもしれんですね。

うおあああーっ、ぼくの頭がー。ぼくの頭がー。

まだ若干尺が残っていますが、この先はエピローグ的なお話なので、二人の恋物語は、その紆余曲折は、実質これにて完了です。結果はまあ、見ての通りですね。

セックスセックスね。SSやね。

やっぱりですね、ちょっとこれ収拾ついてないですよね。なんで覗かへんかったら泣き出すのか。なんで今更お互いの気持ちの確認みたいなのが必要なのか。どっから森島から告る必要やら、君は君のままええでみたいな話が出てくるのか。

頭が……頭が割れるようだ。そして体がとても熱い。ぼくの体……発熱している。頭……。ぼくの頭……!!

ん、先生、大丈夫ですか。

先生、先生……? これはもしかして?

ぐんおおおおおおーー!! あたまーーーーーーーーー!!

先生、気をしっかり! 先生!

水を持ってきてください、折口君、冷たい水を、はやく!

フーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンン!!

ぐわーっ、まぶしい!

ええー、何これ。

なるほどな、そういう事やったか。アマガミSS、驚くべき作品やわ。

……先生、十五年ぶりですね。やはり、この回で先生をお招きしたのは、全き正解やったわ。疾風に勁草を知るってやつやな。

いや違うでしょ、何ですか、これ?

うん、折口君、先生はな、神通理気(じんつうりき)言うてな、アニメから受けたエロさが度を越して頭がフットーすると、一瞬で真相を悟ってまうねや。

何それ、流水大説?

折口君、國ちゃん、ぼくはもう大丈夫です。ぼくは、全てわかりました。アマガミSS第4話、ぼくと詳しく見ていきましょう。

よろしくお願いします。

まずぼくが注目したいのは、Bパートにおける水のイメージです。というのも、Bパートは最初から最後まで、水という元素に支配されている。

確かに、Bパートは、まず橘くんの頬から垂れる汗からスタートしました。それから噴水が映って、橘くんの頭から立ち上る湯気。これは気化している水ですね。

その後二人でプールに入って、お部屋ではるかちゃんが風呂に入りますよね。それから雪が降ります。これは凍った水ですね。最終的にこれらの水は、はるかちゃんの涙になります。

ちょっとテーマ批評的なとっかかり方ですね。なるほど、乗ってみましょう。Bパートに出てきた水の一覧です。

橘の頬の汗駅前の噴水橘の頭から湯気
ホテルのプール(溜まっている水)プールの水しぶき(小、大)プールあそび(水の表面→水しぶき→水の底面→流れる水)
水を飲む橘「トイレも立派だよー」(言及のみ)はるかの入浴
模擬店のおでん(火を通した水)雪(凍った水)はるかの涙

橘の頬から流れた汗が、色々な姿・形を経て、森島の涙になる。水は流れる事もあれば、溜まる事もあるし、茹だる事もあれば、凍る事もある。体が水に入る事もあれば、水が体に入る事もある。これは複雑ですね。

フィクションにおいて、水とは何でしょうか。それについては実にたくさんの本が書かれましたし、もちろん一言には言えない。ただ、一つ確かに言える事は、ここでは水とはるかちゃんの間に、高い親和性があるという事です。

なんてったって4話Bパートは、要ははるかちゃんが二回水浴びする話ですからね。一回目は公開された、二回目は秘められた水浴びです。これらの水は、はっきりとはるかちゃんにまとわりついている。

そういえば、1話で、こんなシーンがありましたね。


「私、水を見るのが好きなの。海とか、川とか、噴水とかね」

噴水、湧き水は水の生まれる場所です。その水は川で成長し、海で一つになる、あるいは果てます。その全部を眺めている。はるかちゃんは、明らかに水の人です。水の女性なんです。

はるかちゃんの碧眼の青色は、同時に水の色でもあったわけですね。それからあの髪型、ストレートとウェーブが合わさったあの不思議な髪型は、垂直に落ちる水と水平に流れる水とを同時に表わしている。

全くね。すると、はるかちゃんが常に身に付けているあの黒いカチューシャは、すなわち堤防の隠喩と見ることができる。だから、カチューシャをしてない時、はるかちゃんはリミッターが外れているのです。

髪型はともかく、作中で森島と橘の仲が進展する時、常に水、または水にかかわる場所が問題になる事は確かです。

1話では上の噴水ですね。あそこで最初の告白をするでしょう。それから2話では、二人で校内のプールに行く。行った帰りに二回目の告白がある。

3話では、二人が冒険に出かける。その行った先は、ポンプ小屋です。そして、そこから帰ってくると、橘は森島にラーメンのスープを飲ませる。

そう。ただ、1話から3話までは、水は出てくるけれども、二人と水の間には常に壁がある。噴水は見てるだけだし、校内のプールでは泳げない。ポンプは仕舞われてますし、スープを飲む時ははるかちゃんは体の自由が利きません。

4話Aパートでも、海を眺める二人が出てきますね。あそこでも二回見てるけれども、二回とも見てるだけです。本当に水と戯れるためにはBパートを待たなければなりません。

上の図に戻るとね、水を眺めて満足する私、この構図は明らかに、ナルキッソスの神話を想起させるものです。ここでは、はるかちゃんの世界は、一人で美しく完結している。そこに、橘くんという波紋が現れるのです。

そして、最終章の後半で、一緒に水の中に入る事になる。なるほど、折口君、ここはちょっと、あの映像も一ぺん流しておいた方がよさそうですね。お願いします。

何のこと?

基本的に、われわれこのレビューは、テレビ放映版を基準としてレビューしてきました。ところが、DVD版だと、テレビでは流されなかった、追加のシーンがあるんですよ。

こちらになります。プールで遊んでるシーンと、外で再度待ち合わせする(「着替えるのに手間取っちゃった」)シーンの間のシーンですね。


橘「あっ……ついですね」
はるか「うん」

えっ、何これ、サウナ? えっ、あのプールサウナもあったの?


はるか「うぉう! 橘くん、すごい汗!」
橘「ええっ、そ、そうですか?」
はるか「うん、だってほら、見てえ! 君の方がこんなにいっぱい汗が出てるんだもん」


はるか「ていう事は、橘くんは、代謝が良いって事なのかなぁ」
橘(こっ、これはぁ、先輩との肌の密着もさる事ながら、僕と先輩の汗が……)


(混じりあいながら……床に落ちてゆく……!)

ちょっとオー!! 何これずるいわあ! これはずるいよ、何でこれ見してくれへんかったん?

いやあ、申し訳ないです……。ちょっと、われわれがあれしてる間に、DVD全部出ちゃったし、これからはDVD版準拠でやっていきましょうか。

うおおー、あたまがー、ぼくのあたまがー。

それはもうええねん!

一緒に水の中に入るだけでなく、二人の間で各々の水、つまり体液ですね、を混合するまでになる。しかもこの後、橘くんわざわざ水を飲み干してるシーンまで映すんですから、これはなんかもう、一丁あがったようなもんですよね。

でも問題は、そこまで含めて前フリっていうところですよね。その後二人で部屋に入って、森島一人また水の中に入るわけです。それから後、さっき言ったように、収拾つかない話になってるわけです。あれはどう整理をつけますか?

その辺を今から、くわしく見ていきましょう。

まず、水とフィクションの関係について、一冊だけ引用させてください。ガストン・バシュラールの「水と夢」という本です。

バシュラールは想像力を形態的想像力と質料的想像力に分け、火・水・空・大地の四大要素について、我々の想像力がいかに生まれ、互いに作用していくのかを検討しました。

女の髪と水が連関している事も、水を眺める行為にナルシスを見出す事も、全てバシュラールが自著の中で述べている事です。その中でもバシュラールは、女性と水浴というテーマについて、こういう事を言っている。

水浴はもはやスポーツの一種に過ぎない。
スポーツであるかぎり、それは女性の羞恥とは正反対のものである。
その時から水浴の情景は人混みなのだ。(……)
それは本来の自然の詩をもはやあたえることはできないのである。

いいことを言うなあ!

プールで二人で戯れても、サウナで汗が混ざって落ちても、それはあくまでスポーツの一種なのです。たしかに体液は混ざってますけど、それはどうなったの? 床に落ちただけですよね? まだ床があるんです。一枚底があるんですよ。

ふーむ。あくまでスポーツである限りは、橘は森島と一緒に水に入ったり、水を混ぜたりする事ができると。逆に言うと、そこまではできるようになったって事でしょうか。七咲編での検討課題が増えましたね。

人混みの前で水着で、それでいくらうっちゃりドッキリしようが、レジャーの範囲なわけですね。確かに水着自慢してるくらいですから、そこに羞恥というものはない。一方、風呂だと「覗いちゃダメよ」ってなるわけでしょう。

そりゃ全部脱いでるから当たり前ですよね。いや、ていうか、そもそもあれは覗いてよかったわけでしょ? むしろ覗かなきゃいけなかった。むしろあの下りこそが一番意味通ってないところですよね。あれは一体何なんですか?

そう。覗いてはいけなかった。でも、覗かなきゃいけなかったんです。ここに二律背反、アンチノミーがある。でも、その説明の前に、少しだけ遠回りをさせてください。あの入浴は、はるかちゃんにとって、一体何だったんでしょうか?

おめこ綺麗にすんねやろ?

おまえ最悪やな!

そらそやけど、そやったかも知れへんけど、奇しくも國ちゃんが言うた通り、「二回目は秘められ」てんですよ。覗くなと言われたよね。で、橘くん覗かない。それはいい。でも、カメラまで一緒に覗かないんですよ。これって変やろ?

確かに、アマガミSSのカメラは、ヒロインが風呂に入ったら、必ずその様子を映してきました。少くともヌードは撮ってた。美也はおろか、橘すらです。森島の入浴シーンだけ、何故か省かれている。

橘くんのギョロ目なにこれ? なにこっち見てん?

厳密に言えば、森島の入浴姿は1話の時点で映ってる。しかし、あれは橘の妄想の一シーンなんですよね。実際に起きてる事ではない。

そう。実際にはるかちゃんが入浴してる時は、カメラははるかちゃんを映さず、空の浴槽だけを映すんです。この時、バスルームの中で何が起きているのか、誰も何も、知らんわけです。

言われみれば、なるほどこれはちょっとひっかかりますね。妄想とは言え一回出したので二回は出さないってだけかもしれませんが、森島の「覗くな」の命令が本当に作品自体に効いているとも見れなくもない。

はるかちゃんは、水の人なんです。水の人が水に戻る。今度は「スポーツ」ではなくてね。数合わせでは絶対省けないですよ。なら浴槽映す必要だってないでしょ? これは見てはいけない場面なのよ。見てはいけない水浴びって何かね?

神事ですね。

水垢離ですね。衣そそぎ(すすぎ)ですね。ミソギハラエですね。いや、あれらは別に見ていいんだ。洗礼だって人前でやるでしょ。でも、はるかちゃんの入浴は見ちゃいけないのよ。これは密儀なんです。

でも、同時に見やなあかんかってんでしょ。

そう。それも大事。でも、まずは「見てはいけない」をやろう。これさ、構図だけ取り出すと、ぼくらもう何回も何回も見てきたよね。禁室型説話です。「見るなのタブー」ね、ウィキペディアの項目にまでなってる。基本中の基本です。

鶴の恩返しやったり、蛤女房やったり、トヨタマビメの子産みであるとか、中国であれば捜神記、スッポン女房とかがそうですね。西洋に行けば、まんま「風呂を覗くな」という話、メリュジーヌの伝説がある。

それらの話に共通する要素言うたら何かね?

水の女。水浴の密儀。見るなのタブー。4話Bパートのこれらの事実が総合して指し示す真実は、一つしかありません。つまり、森島はるかは人間ではないのよ。

ええー、マジでえ。

森島はるか。水の女、水の化身。天女か……少なくとも魔女。水神の使い、いや神そのものか。水のアマガミ、天ツ神です。その証拠に、彼女が、人ならぬ力を発揮する場面が、この作品中に必ずあるはずだ。

い、犬が……よくなつくとか、ですかね?


「森島はるか、伝説の犬使い」「犬たちは、森島はるかの指示に従って色んな芸をこなしてるんだよ」
(アマガミSS 第20話 「サヨナラ」)

ああ、これは間違いないね。DOGってそもそもGODなわけでしょ。動物に異様によくなつかれる水の美女の話って鏡花君も書いてたよね。

高野聖ですね。あの美女は実は魔女で、動物たちは魔女に化かされてしまった男どもなわけですけど……。

同じ事です。上の犬たちも、森島はるかに化かされてしまった輝日東の男の子たちなんですよ。彼らは、はるかちゃんの入浴姿を覗いてしまったんです。一方、橘くんは、覗かんかった。だから、化かされずに済んだんですよ。

そっ、そうだったの、かあ……。きっ、気がつかなかった、なあ……。

はるかちゃんのあの天然ぷりは、これで説明がつきますね。つまり、人間界にやってきた神様なわけ。でもって、その人間界での神様の護衛を努めるのが、塚原響ちゃんです。この子もまた水の世界からやってきてるわけです。

響ちゃんが水泳部の「長」としてあるのはそういう意味。一方、はるかちゃんが水泳部の部員でない事も、これで説明がつきます。水の神様がガチ競泳をやったら、人間でないことがバレてしまう。

ううーっ、ううん……。そうですねえ、部員やないけど、でも人が泳いでるのを見るのが大好きっていうのも、そういう風に解釈できな、くも、ない、ですね……。

水のアマガミである森島はるかは、気に入った男の子を誘惑して犬に化かし、飼ってしまうという困った習性があった。その一番の愛犬が、去年死んでしまって、そこに現れたのが、ちょうど橘くんだったわけです。


覗くなと言うたのは、やっぱフリやったんですよ。でも、橘は本当に最後まで覗かなかった。困った。このまま夜を過ごさなあかん。人と人ならぬものがよ。はるかちゃんは混乱します。わけがわからなくなり、橘くんを怒鳴りつけてしまう。

でも、橘くんは、その怒りさえ、柔らかく受け止めてしまうんです。「先輩はそのままで」と、異形の者であるはるかちゃんを拒否しない。逆に「僕がちゃんとしますから、だからもう泣かないでください」と宣言するのです。

ううっ、ううーん、合ってる、りくつは合ってる……!

いや合ってないでしょ、なに同調してんですか?

二人は契りの口づけを交わし、人間の男と水のアマガミが結ばれます。人間と水の結婚、これも世界中に類を見られる神話ですよね。そもそも水というのはどんな物質でしょうか。國ちゃん、いくつかあげられますか。

えっ、あ、はい……。じゃあ、この大修館書店「イメージ・シンボル辞典」から、いくつか引いてみましょうか。

water

1 混沌の水。 a すべての生命が現れ出る「第一物質」を表す。この水は物質世

はいっそこまで! はいっありがとう、國ちゃんありがとう、もうええで!

あれっもう? えっ早すぎませんか? またこのあと全然続きますよ。

すべての生命が現れ出る。これです。何も、神話や宗教だけではない。哲学もまた、タレスの「万物の根源=水」から始まりました。水は、何よりも、生み出す物質であるのです。世界は、水から生まれるのです。


人間と水の結婚。これすなわち、国産みの神話に他なりません。トヨタマビメの話が出ましたね。橘くんはホヲリなんです。アマガミSSは、ラブコメアニメでありながら、同時に万国創生の神話、預言でもあるのです。

冒頭の山についても、これで読み解く事ができる。一回目の海と山(水+土)は、オノゴロ島の神話に倣い、地球が産まれた事を暗示する。二回目の海と太陽(水+火)は、海から太陽が産まれ、天体が産まれた事を表す。

あれは昇ってるんじゃなくて沈んでる太陽なんですが、まあ百歩譲って良しとしましょう。国産み言うても橘くんの世界全然存在してるわけですよね? 世界があって社会があってそこで学校に行ってる。そこから何国を産み出すんですか?

もちろん、それは新しい世界、アマガミの世界です。ぼくらは現世、この不浄で、不完全で、不安定な世界から、全き世界、浄化された不動の世界、アマガミ世界へアセンションするのです。

と言いますと?

折口君、アマガミSSの放映年は、2010年だよね。今年は……2011年だよね。そして、2012年、来年ですね、2012年に、マヤの暦が完了する事は知っているかい?

ああーっ、まずい、これはまずいなあ。

今の世の中……おかしいよね。アフリカでは子供がすごい死んでるし、強国の軍拡競争は留まるところを知らない。奇病AIDSが世界的に拡散を続け、米ソの核ミサイルは世界人類を60回滅ぼして余りある。

煽り方が古いですよ。先生、認識が20年くらいズレてませんか?

ああーっ、趣味が悪い……。見なかった事にしたい……。


マヤの長期暦は2012年12月21日に終わりを迎える


2012年12月23日、地球は次なるフォトンベルトに突入する

アマガミ世界を迎え入れるために、ぼくら人類は限られた時間の中で次のステージへ進まなければならない。アマガミSSはさまざまなアナロジーとアレゴリーを使って、その事をぼくらに語りかけるのです。


コンドラチェフサイクルと太陽の黒点。水の波がごとき運動が世界経済を支配する

アマガミSSがトヨタマビメとホヲリの物語、つまり神道の物語を援用している事は説明しました。でも、神道だけではない。アマガミSSはまた、仏教の物語としても解釈できるのです。

それは、どういう事でしょうか。説明してください。

つまり、アマガミSSには六人のヒロインがいます。で、その一人が水のアマガミでした。一人だけ人間じゃない、ってのはないよね。とすると、他のヒロインも風や火など、他の元素のアマガミであるはずだ。六つの元素言うたら六大です。


アマガミの作品構造が真言の世界観を表していないという事は誰にも証明できない

アマガミの六人のヒロインは、即ち六大体大であります。体大とは宇宙の実体であり、六大は無碍にして常に瑜伽、宇宙の物質および精神的原理です。その一人一人を四回ずつ絵解きしていく。四という数字は、これは四曼です。


諸尊の形像的表現・諸尊の印契的表現・諸尊の種子的表現・諸尊の立体的表現

六大が宇宙の実体、四曼が宇宙の現象ならば、三密は宇宙の働きです。身密・口密・意密ですね。はるかちゃんが橘くんに三回の告白を求めるのはそういう事です。口で好きと言い、心で好きと言い、体で好きと言わねばならない。

(怒られるで……)

六大無碍にして常に瑜伽なり、四種曼荼おのおの離れず、三密加持すれば速疾に顕わる、と来たら、もちろん、重重帝網なるを即身と名づく、と続く。これは空海の即身成仏論そのものではありませんか。

アマガミSSは、悟りの寓話でもあったのです。覗くな=覗けの二律背反は、そのまま悟りの二律背反、識れ=識るなかれの二律背反だったのです。

アマガミSSは、神道の象徴物語として、新しい世界が生まれる事を伝えました。同時に、仏教の象徴物語として、ぼくらに悟りが必要であること、人類がネクストステージへ進まねばならない事を伝えています。

アマガミSSの神道的密意、および仏教的密意について、お話をさせていただきました。しかし、まだまだこれだけでは終わらないのです。

たいへん興味深いお話です。どうか続きをなさってください。

先生、アニメ……アニメ見ましょう。ご、5話も、6話もおもろいですよ。

先だって、國ちゃんがはるかちゃんの髪型について、落ちる水と流れる水を見出しました。ぼくは、この髪型について、もう一つ、古代ユダヤから伝わるある図形との偶然ならぬ相似を指摘しておきたい。


はるかの髪型と生命の樹(驚くべき相似)

生命の樹、または、セフィロトと呼ばれる事もある樹形図です。王冠ケテルから王国マルクートへ流れる聖性の象徴と、はるかちゃんの髪型との一致。南方ぁ、カバラを使えよぉ、カバラで読み取れよぉと、ぼくに語りかけているかのようです。

ぼくはその言葉に従いました。すると、驚くべき事実が明らかになったのです。君。君……そう君、アマガミをヘブライ文字で書くとどう書くか知っていますか。その数字がいくつになるか知っていますか。

ゲマトリアですか。いや、知りませんけども。

アマガミをヘブライ文字で書くと、אמגםです。その数字は1+40+3+600=644であって、これは夢見る(חולם)、現わにする(והגלם)、恋人(אהוביכם)、ドラマ(דרמת)という言葉に対応しています。

夢というのは預言ですよね。預言を現わにする恋人のドラマ。それが、アマガミという言葉の秘められた意味です。して、どんな預言を現わにするのでしょうか。その事を知るために、森島はるかの名を、ヘブライ語で書いてみましょう。

40+200+300+600+5+200+500=1845になりました。1845という数字は、……これは、旧約聖書におけるあるフレーズと、また別のフレーズの数字に、丸々対応しています。つまり、イザヤ書24:4および詩篇73:19です。

災難が……世界の終わりが近づいています。秩序は転覆し、高きものは滅ぼされ、低きものは救われるでしょう。最後に、はるかちゃんの「本名」、森島ラブリーはるかの計算式を書いておきます。

最後に明かされたはるかちゃんの本名、それはそれ自体が暗号であり、メタメッセージであったのです。

こうして、アマガミSSの恐しいメッセージを読み解いてきました。つまり、新しい世界が生まれる事、人類が次のステージへ進む必要がある事、そして古い世界、古い人類は容赦なく滅んでしまうであろうというメッセージです。

こうして、アマガミSSは、神話的物語から神的物語になったのです。ぼくらは……

言うてる事めちゃくちゃですよ。ラブリーの計算式、語末形無視してますよね? だから数字が減ってる。それに、旧約なんてだいたいどこ開いても不穏な節々探せますし、神的/神話的も全然元の意味関係ない、これ言いたいだけですよね?

黙らっしゃい!!

ドン

痛い!

これが、神的暴力だ。

うわあ。

この事実を一人でも多くの人間に伝えなければなりません!

先生、先生お待ちを! 戻ってきてください! 先生!

ガリ版はどこだ! すべての造られたものに、福音を!!(マルコ伝 16:15)

タッタッタッタッ

先生ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!

……行ってしまいましたね。

………………。

まあ、テーマ主義とオカルトは紙一重という事で。

外の空気を……外の冷気を吸えば、きっと落ち着いて、正気に戻られる。そしたらきっと、きっと再びこちらへ……折口君、わしは先生を待ちます。良ければしばらく待ってくれんか。

……。
……。

……。
……。

……。
……。

……。
……。


ザアァァ------

……。

……。

チッ チッ チッ チッ チッ

……。

……。

ディーンンン(カッコウ、カッコウ)

うぉう! ……なんや時報か。びっくりした。

ディーンンン(カッコウ、カッコウ)ディーンンン(カッコウ、カッコウ)ディーンンン(カッコウ、カッコウ)

戻ってこないですよ。

……戻ってくるよ。

……。

……。

それより、先生はどうなんですか。

ん、何が?

アマガミですよ。一緒に見てたでしょう。色々思わせぶりな事言うてたのに、何かないんですか?

いや、そんなん別に、今更言うようなことも……だいたい先生が色々言うてくれはったし。

じゃあ、先生はあの結論で納得してるんですか?

いや別に、納得はしてへんけれども。

ほんなら言えばええやないですか。納得行かなかったところも。どうせ戻ってこないですよ。

だから、わしは、戻ってくるって言うてるって!

じゃあ戻ってきますよ。戻ってきたって別にええやないですか。おらん間に雑談しとった言うとけばいい。

先生は……先生は、話は変やったけれども、何かいろいろ出てきて、おもろかったし。わしの考えとか、全然地味やし、別に普通ですよ。

やっぱ何か考えとったやないですか。今日は言わずに帰ろう思てたんですか。

いや、だってもう、たいがいもう長いやんか。みんな疲れてるって。あんな派手にドーンドーンみたいな話の後に、普通の話聞きたくないでしょ?

そんなんこっちが判断しますよ。なんでちょっといじけてんですか? 言うだけ言うてれば私は聞きますよ。わざわざ何しに一緒にやってんですか?

……。

……。

それならば……!!

森島はるか編 最終章「レンアイ」(完)