いやあ我々非常にこう、いろんな所でやらしてもらってるんですけれども、最近ほんま増えたなー思うのが、何やスマートフォン?あれをこうくいっくいって、いじってるお客さんほんま多いですね。
橘にとって恋愛は全ての活力源であり、勉強や運動がはかどるだけでなく世界もこんなに輝いている。
恋愛体質ですね。
ここだけ見て、なんかこいつ気持ち悪いなーと思う視聴者もいるかと思いますが、なんかではなく橘は気持ち悪いですし、この回はずっと気持ち悪いままです。
オープニング
キングとジャックに囲まれるという事は、やっぱりリオちゃんはクイーンなんですよね。ハートのQなのかスペードのQなのか。
高橋先生に授業での熱心さを指摘され、さっそくノロケる橘。薫や恵子にも自慢気に恋愛の効用を語る。
そんな橘の袖を引っ張り、その場から立ち去らせるはるか。いつにもなく少し機嫌が悪そうだ。
シャブでも打ったかのような勢いでノートをとっていたので、一声かけます。で、「恋愛がらみかしら?」と一発で当てる。橘は「わかっちゃいますか?」と得意気です。
「伊達に教師やってないわよ」って返すのがいいですね。オーラ出てた? 俺オーラ出してた? 的な橘に対して、あくまでわしの経験や言うてるわけですから。
と、そこで棚町と田中が現われて上の図です。田中は担任の頭に完全に隠れています。
棚町はビニール袋を手にしてて、購買帰りの様ですが、時間的にはついさっき梅原と屋上にいて、橘を眺めながらジュース飲んでたんですよね。それがここでは田中とこれから昼を食べる風になってて、ちょっと不思議な動線になってます。
「橘くんに春が来た」と担任から聞いて、おいおーいとばかりに橘にからむ棚町です。こういうのがするっとできるんですね。
しかも動きません。
DVDでは直ってます。
直ってる! え、ここ直すの?
そうなんですか。春が来てもお昼は薫ちゃんと食うわけやね。とまれ、恵子ちゃんはスタッフに愛されてますね。
成長の果てに犬になりきってワンワン鳴くことになるんですが、それはおいおい見ていきましょう。
この二人が付き合う話もあるんよなあ、と我々一瞬リマインドするわけですよね。そこにすかさずはるかちゃんを画面に出す。タイミングの作り方ですね。
柱の物陰からぬっと出てきた森島。面白くない顔で橘を連れ去ります。何故よと戸惑う橘に「制服の袖を掴んでみたくなった」とムチャクチャを言う。
一階まで降りてきたところで、ようやく離してもらえます。そこでタイトル。思わせぶりなフレーミングですね。
この章のタイトルが「ヤキモチ」で、まあ今妬いてるわけなんですが、このヤキモチもこの後20秒くらいで終わっちゃうんですよね。あとはこの話終わるまで妬きません。
やきもち虫の治まらないはるかに内心喜びつつ、うまいこと愛情をアピって彼女をなだめる橘。
機嫌を直したはるかに再び眉毛へのキスをねだるが、はるかはあっさり断わった上で驚きの提案をする。
せ、先輩……? どこに行くつもりなんですか?
「忘れちゃった!」
むっはあ!
「高橋先生や他の女の子たちと、あんなに楽しそうにしちゃってさ」って、何気に担任の先生も対象なんがええね。際限ないですね。
今までで一番かわいらしいと思った人も多いんちゃうかな? こんなぷりぷりとした拗ね方をされたら、大概の男はニヤついてまうよね。
男が安心する程度の嫉妬に価値はないんで、すぐ終わってくれてよかったんですが、橘に比べてね、はるかちゃんにはこういう事させる不安があるという事は、忘れないでおきたいですね。
「先輩と仲良くなれて、幸せです」「え?」
「そんな話をしてたんです」「へ、へえ……。そうなんだ……(かあっ)」
イージーやなあ……。
前回の告白のシーンなんかも特にそうですが、とにかく手が表情豊かなアニメですよね。いつもってわけじゃないですがここぞという時はじつに良く動く。
手と指というのは一番エロスが宿る部分ですから。恋愛の話をするなら手がよく動かないと嘘だと思います。
ちょっとかりあげ君みたいよね。この表情といいここだけ植田まさしみたいですよね。
(もう一度……もう一度眉毛にキスしてほしい!)
この回ではハッキリと性欲ドリブンな橘です。
いつもセックスの眼鏡越しで物事を見ている柳田先生ですが、この回は何かが違いますか。
真面目に逃げましたね。
「お願いします!」
「一度だけでいいんで!」
この表情です。
実際、橘の顔をじっと凝視して、要求を断わります。六つ上のカット。
必死で八の字になってる君の困り眉毛 | いやらしい事を考えている眉毛ね |
何が違うんだよ!
あれは訓練の末でしょ? えっ、そういう才能?
眉毛にキスはしたくないはるかちゃん、橘くんに出した代案はこちらです。
「そうだ。今回は橘くんから私にキスして」
みんな。まだまだ、まだまだ見るのを止めるのは早いよ。
一緒じゃないです。さっきも言いましたがこれは関係性の話なんですよ。自分からするか相手からされるかは少なくともはるかちゃんにとっては全然違います。
「我ながらナイスアイディア!」っていう言葉は、そっちにかかっとるんだと思います。たぶんキス自体は最初から全然OKなんですよ。主眼はキスじゃなくて、相手が何かしてくれるっていうそれ自体なんですよ。
これはクエストなんです。冒険に出る準備が整った。しかも他人に見つかってはいけない、お忍びの出立です。我々民話の研究でさんざんやってきましたね。
二人の位置が直りました。
「橘くんから私にキスして」「でも、ここじゃ嫌」「途中で誰かに会ったら、キスはナシだから」
全ての要求に叶うべく、橘ははるかの手をとって走り出す。二人が向かうのは学校の外だ。
走る二人を俯瞰で撮ります。とてもロマンチックなカットですね。
「僕を信じて、ついてきてください!」の言葉とともにね。はるかちゃんが一番聞きたかった言葉でしょう。だから「うん」て応える時は完全に嫁の顔になってる。
金網の穴を潜り抜けて、校舎の外に出なければなりません。
ほう。
いや、緑豊かなのは校舎の中だってそうですし、全編通して緑は茂ってますよ。
うわ、適当!
二人がたどりついたのは、校舎外のポンプ小屋でした。
農業用のポンプですか。ポンプというのは、ピストンの運動で水脈から水を汲み上げるものですよね。その水が大地に撒かれて、土を汚して、種を育てる。
ポンプというのはまた、井戸の別形態でもありますね。井戸というのは、古来より異界と繋っている場所です。先生の死後説の一つの根拠にはなりますね。
「へえ~、中はこんな風になっていたんだ。意外と広いんだね」
「はい、意外に」
「…広いんですよね」
こいつを捕まえろ!
やらんの?
そうか。そうですか。…なんや! そういう事なら! なんや橘くん、腰抜けやな! かいしょなしや! がはは!
(……ようし、先輩を小屋に連れ込んだぞ!)
ほんまにやらんの? こんなん言うのに?
へえー。……。へえー。
黙ってたって、何秒とかですよね。やっぱりこの雰囲気に圧されてますよね。しかし、自分から私びびってますよ言うのはちょっと不用心やなあ。
^^
的な弁解をすると、森島は見事に照れて、再び心を許したモードに。いよいよキスにとりかかります。おおっ、キス……するんですか。いよいよ……。おおっ……、はるかちゃんがこっちを見て……、口がアップになってる。少しその口が微笑んで……。か細い手が……。手……?
「唇はダメよ」
昭和か!
「それとも……やめる?」
やめますか。
橘もやめません。森島は、「わかってる、冗談よ」と笑います。
この辺主導権がころころ変わるので面白いですね。橘は文字通り頭を抱えてどこにキスをするべきか必死に思考を巡らせます。
そのとき、橘の脳裏に
犬たちからの啓示が!
「ひ、膝の裏」
「え?」
犬の啓示が。
これで三話連続犬が助け船を出してくれました。犬が取り持ってくれたような恋愛です。
猫の場合もありますけどね。とはいえ、どのヒロインも必ず風に髪がなびいて、なんらかの動物にかかわる場面がある。
ヨリシロですね。
ヒロインのうち一人だけ、自分のパートで風も犬も出てこない女の子がおります。これはその時に話しましょう。
「さすが橘くんね。その考えはなかったわ」「どうして膝の裏なの?」
「犬がじゃれてよく舐めたりするじゃないですか」「どうして犬は膝の裏を舐めるのか、犬の立場になればわかるかもしれない」
よく舐めたり、する?
犬が人を舐めるのは二つの理由があって、口元を舐める時は、子犬が母犬に食べ物をねだる時、転じて甘えている時で、それ以外を舐める場合は人の汗で塩分を取っている時です。なんで膝裏だけそんなに舐める事は無いと思うね。
……。
盛り上がってきた! 盛り上がってきたよ!!
「ほ、ほら、ちょうど子犬っぽい僕ですし!」「さっき先輩も、子犬みたいな目って!」
人としてどんどん成長しているのがわかりますでしょうか。
「じ、じゃあ、膝の裏を出さないといけないわね」
「そう、ですね……」
うふほほう! エロいなあ! 建物映すんがエロいわ!
「こ、これでいい?」
「は、はい、バッチリです!」
「い、いつでもどうぞ」
う、うおおおおおん!
夢乗せーてー! はばたけーよ! 鋭いスイング魅ーせてくれー!
さあ君が ヒーローだ 橘純一
かっとーばせー たーちばな
かっとーばせー! たーちばな!
チュッ
「……っ!」
行ったあああああああーーーーーーーーー!!!! ラッシャアアアアアアアアア!!!!!!!
アイキャッチ
アン、マ♪ はい、はいはい!
思い思いの昼休みを過ごしている輝日東高校の生徒たち。
一緒に昼食を取る七咲、中多、美也。仲間にお宝本自慢の梅原。噛む噛むダイエットの桜井。森島がいないのを不審がる塚原。
相棒は女の脚を舐めてるというのに、露知らずお宝本でご満悦の梅原はちょっと不憫ですね。
一方、膝裏キスが続いていた。
目をつぶって耳をすませば、いかがわしさの玉手箱や……。
長いね。ま、ほんまに上手いキスには、長さはいらんのですけどね。
おもむろに口の位置を上げていこうとする橘。しかしはるかに制止され、怒られてしまう。
「そこから先は、まだ通行止めなんだから!」
昭和史に残る名台詞やね。
怒られた橘くんは、犬になりきり「ワンワン」「クゥーン」と鳴いている。気持ち悪い。
はるかちゃんの反応がまたよくてね。「違うわよ、ワンちゃんの気持ち!」ってね。
「違うわよ、ワンちゃんの気持ち!」
ここですか。
建前が完全に飛んでいた橘は、あとで報告しますってその場をしのぎます。その後報告する事は永遠に無いんですが。
ラディカルな一時を過ごし、二人は昼食へと戻っていくのだった。
こうして膝裏キスのシークエンスは終わりです。いかがでしたでしょうか。
/ H I \
A B C ↑ D E F G J K ↓
\ M N /
ウラジミール・プロップによる、全ての魔法昔話に共通する機能の継起順序(一部)
プロップは、ロシアの魔法昔話について、あらゆる昔話に不変の機能がある事、その機能は有限である事、そしてその順序が同一であるとしました。
A | 主人公の不幸、または欠如 |
---|---|
B | 不幸・欠如を解消するための手立てが提案される |
C | 行動の開始 |
↑ | 主人公の出発 |
D | 魔法の力を得るための試練 |
E | 試練に対する主人公の反応 |
F | 魔法の力の獲得 |
G | 主人公の移動 |
H | 闘争の発生 |
I | 主人公の勝利 |
J | 主人公に印がつけられる |
K | 不幸・欠如の解消 |
M | 難題の発生 |
N | 難題の解決 |
↓ | 主人公の帰還 |
順に当てはめていきましょう。物語のあらゆる機能はAに始まってKに向かうものです。欠如の発生とその解消ですね。ではその欠如とは何か。はるかちゃんとキスがしたい、ですね。
無事に欠如を解消するためには、魔法の力が必要になります。ここでは犬の力ですね。犬からの啓示をうけ、犬になるための力です。
校舎外に出る時に、金網の穴を潜りますよね。潜る時に四つん這いになります。四つん這いというのは犬のポーズですよね。
目的地に辿りついた時、真の闘争(H)、または難題(M)が発生します。「唇はダメよ」ってやつですね。これを解決するために、犬の力が必要になる。
何から何まで図式通りですよね。膝裏キスのエピソードは、形式的には完全に魔法昔話、つまりヒーローによる冒険の物語なんです。
もちろんです。こうこういう形式に当てはまる、というのは単なる指摘ですから。問題は、なぜそのような形式を持つエピソードが、この場所に挟まるのかという事です。
幸い、二人の話はまだ続くわけですから、その回答は先の筋を追いながら考えていきましょう。
夜。自宅のこたつに籠もって、昼の出来事を思い返す橘。
気持ち悪い笑顔を止める事ができない兄に、妹は人間性の故障を感じとる。
「お母さん! にぃにが壊れたあ!!」
おかんとか居ったんや……。
せつない妄想やね。しかし、ほんまに親の影が薄い家庭ですな。
同じ恋愛を扱っても、たとえば少女漫画の構成法とはその辺が一番違うかもしれませんね。そういう意味で唯一の例外、棚町薫ちゃんは興味深いんですが、その話は彼女のパートまで待ちましょう。
もう一度森島先輩の膝裏にキスを!という欲求から逃れられない橘。
所かまわず本人にキスをねだり続け、しまいにはキレられる。
病院行ったほうがええね。
このノートの字もちょっと頭やんでる人の字よね。カクカクして。しかし同じ事もう一回やって欲しいねんな。
「お願いします!」
「お願いします!」
「お願いしまーす!」
「お願いします!」
しまいにはキレられます。
子犬の話と偽り、響に橘のしつこさを相談するはるか。
しかし、響ははるかの嘘をすぐに見破ってしまう。彼女が確かめたいのは別の事なのだ。
この先、この回で最も重要なシーンです。
洋風で屋敷然とした森島邸に対して、おもいっきり和風で、実家! という感じに振ってますよね。でも黄色のパジャマはかわいいと思います。
わざわざ座布団用意してあるくらいですから、しょっちゅう長電話してるんですよね。他愛のない話から、こういう悩みの相談、忠告、助言、または叱咤が、何回も何回もあったんだろうと思います。
どういう話の切り出し方したんやろね。「執拗に膝裏を舐めてこようとする犬がおる……」とでも言うたんでしょうかね。
当然塚原には通用しません。余裕の表情。
鳴いてますね。家の外から。塚原家の飼い犬なんでしょうかね。
少くとも犬の飼い方は知ってるんですよね。「調教する時の有効な手段」をレクチャーしているわけですから。
この発言には森島もたじろぐ。「動物じゃないんだから!」と、自滅してしまいます。
という事は、こういう隠し事は初めてなんですね。塚原にも隠しておきたい事ができた。
塚原の方から、一歩踏み込んでくるんですね。「本当に相談したいことって、その事なの?」と。森島は虚をつかれる。
(響)「素直に言いなさい。……ちゃんと聞いてあげるから」
持ち手を変えます。
森島が本当に抱えていた悩み事は何か。
「と、年下って……難しくない?」
「年下が難しい?」
「その、何ていうか……年下の男の子に甘えたら、変かな。嫌われない、かな」
「なるほど……。そういう事ね」
「そ、そういう事よ! ほら、あの子からは、その……なんていうか」
「はるか」
「な、何?」
「思いっきり行きなさい!」
思いっきり甘えにいけと。ごろにゃーんと鳴いてみろと。
保護者としての役目を終えるんですね。そして、森島を自由にする。
主人公のジャマをするものと、助力するものが必要ですよね。
これを理論としてまとめたのが、グレマスの行為項モデルです。
送り手 → 対象(客体) → 受け手
↑
補助者 → 主 体 ← 反対者
A.J.グレマスの行為項モデル
主体というのはもちろん橘くんですよね。求められる対象は森島はるかです。周りを埋めていきましょう。
いや、響ちゃんは働きかけるのは、専らはるかちゃんに対してであって、橘くんではありません。橘くんを補助するのは、先も言ったように風である神、そして犬の力です。神(GOD)をひっくり返すと犬(DOG)になるって話、したっけ?
送り手 → 森島はるか → 受け手
↑
GOD=DOG → 橘純一 ← 恋愛の失敗
「アマガミSS 森島はるか編」の行為項モデル(試)
グレマスのモデルでは、補助者と反対者はいてもいなくても良いとされます。重要なのは相手側の送り手と受け手です。送り手に相当するのは塚原響ちゃんです。
それは橘くんです。主体と受け手を兼ねています。
塚原響 → 森島はるか → 橘純一
↑
GOD=DOG → 橘純一 ← 恋愛の失敗
「アマガミSS 森島はるか編」の行為項モデル(試2)
「塚原響 → 森島はるか → 橘純一」。これが「アマガミSS 森島はるか編」のもう一つのプロットです。
言いたい事言え、と言われて、年下に甘えたら変かな? という相談でした。これは、嘘ではないけど、問題の表層にすぎません。
その未熟さを保護し、時には抑圧し、面倒を見てきたのが響ちゃんである事についても述べました。
それによってひどい事にならないだろうか。「嫌われないかな?」てのは、そういう意味ですよね。これは重要な台詞です。今までこんなん言った事ない。そして本当は、これを一人で考えようとしていたのです。
第2話の終盤で、はるかちゃんが自分の禁忌を象徴的に脱ぎ捨てた時点で、こうなる事は決まっていました。そこから、この電話のシーンに至るまで、間に何が起こったか。
ようやくあの話の意味がわかってきましたね。あれは橘くんのイニシエーションの話だったのです。響ちゃんからはるかちゃんを引き継ぐ準備がされていたのです。
響ちゃんははるかちゃんの保護者です。しかし、いつまでもそうではいられない。第一には、後のパートでわかりますが、進路が別々です。しかし、どの道一生の面倒は見られません。そんなのは不可能です。
そこで橘くんが出てくる。もちろん、響ちゃんは、橘くんの事をろくすっぽ知りませんよ。でも、こういう形式の流れを経ているから、橘に任せてみようかという回路が可能になるのです。
それが響ちゃんの愛であり友情であるのです。この回のタイトルは「ヤキモチ」でした。ヤキモチというんはもちろん嫉妬の事です。しかし、そもそもなぜ嫉妬する事を「やく」というのか。
(心の働かせかたを比喩的にいう場合)
1. 心を悩ます。胸をこがす。
- 万葉〔8C後〕七・一三三六「冬ごもり春の大野を焼く人は焼きたらねかも吾が情熾(やく)〈作者未詳〉」
2. 種々に気を配る。あれこれめんどうをみる。
- 虎寛本狂言・止動方角〔室町末~近世初〕「おのれが世話をやかするに依て落まい馬にまで落る」
3.(「妬」とも書く)嫉妬する。悋気する。
- 浮世草子・新竹斎〔1687〕四・一「だみたる恋を柴や町、やかるるたねと知ながら、猶もえくゐの燃やすき」
まず悩みで胸を焼く、という用法があった。8世紀のあたりですね。それから室町になって、気を配ったり面倒を見たりという意味が出てくる。手を焼く、の方ですね。
ヤキモチ=焼く気持ちというのを、もっと広く捉える必要があるんですよ。はるかちゃんが自分の未熟さに胸を焼いている事、響ちゃんがはるかちゃんにあれこれ手を焼いている事。ヤキモチというのは、そのトリプルミーニングです。
それだ!!
塚原にありがとうと伝え、電話を切る森島。「ごろにゃーん、かあ……」と、ちょっとうずうずしています。
さて、こうやって引き継ぎは終わりました。この後森島と塚原が同じ画面に映る事はありません。上の「お願いします!」のカットで最後ですね。
再び輝日東高校の生徒たちの日常。学園祭の準備が本格的に始まっていた。
担任と話をしている絢辻、教室で田中とダベっている棚町、ダイエット本を読む桜井、縄跳びで遊んでいる美也と中多。学際の準備を見ている橘。これはロボットの脚ですかね。
ぼんやりしている橘を後ろから狙うはるか。狩りの時間だ!
「えーい!」
「ごろにゃーん!!」
「にゃーん!」
「にゃーん!にゃーん!」
「何してるにゃーん?」
(先輩こそ何してるんですか、と言われて)「ん? にゃんにゃん攻撃?」
「まいったか!にゃんにゃーん!」
にゃんにゃん攻撃。
犬になった橘に対して、猫になった見立てなんですが、見立てはさておき、これは引きますね。
後ろで「何やあれ!」って指さしてる生徒が、いい味出してますね。
このように自由を爆発させた森島。橘に「どうしたんですか?」と言われ、一瞬「え、嫌だった?」とひるみます。
よかったですね。
すっきりしたらお腹が空いてきたはるか。しかし、学食のメニューはどれも食べ飽きているのだった。
そこで自分に任せろと言いだす橘。「刺激的なお食事をご用意いたします!」と請け負う。
思い出したかのように自分から何かやってくれるんですね。
学食へ向かう二人。テーブルでメニューを待つ森島に橘が差し出してきたのは、ただの塩ラーメンでした。
「刺激的なメニューなんて、今からじゃとても間に合いません。ですからメニューではなく、状況を刺激的にするんです」
コンサルみたいな言い回しをしよるんですね。
橘の提案は、誘拐犯にさらわれた「つもり」になってみよう、というものです。
わざわざ伸びるものを与えられると。で、人質の手を自由にするわけにはいかんから、縛ったまま食べさせてあげると。
この提案に森島は、橘もビックリするくらいノリノリ、話始まって以来一番の興奮ぶりを見せます。
では、見ていきましょう。
「食事?食事なの?!」
「ああ。しょうがねえから食わせてやるよ」
「お願い、はやく!」
「待て待て、熱いんだから少し冷ますんだよ」
「意地悪しないで!」
ここで見るのを止めた知り合いを私は知っているんですけど、どうせ後ちょっとですから、最後まで見ましょう。
「ほうら、まずはスープからだ」
「んっ、ふああ、美味しい……」
ダブルミーニングの話、したっけ?
いやいや、わしらがやらねば、誰がやる!
「お願い、もっと、もっと頂戴!」
「慌てるな。慌てるな。ちゃんと冷まさないと火傷しちまうぜ」
「でも、早く食べたいの……」
「まったく、いやしんぼうだなあ」
言ってみてー。「まったく、いやしんぼうだなあ」って言ってみてえー。
言ってみたいよぅ!
「何ですか?あれ」
「はるかが橘くんに甘えてるのよ」
「あれでですか?」
「邪魔しちゃ悪いわ。私たちは退散しましょ、七咲」
バッチリ見られていました。
甘えてるんだよ、という言葉に、「あれでですか?」っていうのは、まあ普通そうだわなと思いますよね。
塚原は七咲とその場を去ります。響の保護が森島から七咲に切り替わったんですね。
あのラーメンの事を考えると、私は今から嫌な感じがしますね。
一日の終わり。橘の事を考えては、声のならない声をあげ、脚をバタバタさせて喜ぶはるか。
「ねーちゃんうるさいー!」「あ、ごめーん。さとしー」
森島はるかの弟、さとしです。声のみの登場。ここだけ。
エンディング
ようやくこのカットが出せますね。
こうして第3話が終わりました。どんなもんだったでしょうか。
冒険があって、イニシエーションがあって、継承があって、二人の世界が始まる。ここで終わっても良さそうなくらいですね。
次回予告
メインヒロインとは別に、他パートのヒロインとの絡みを最後にまとめようと思ってるんですが、なかなか難しいですね。
まあ、埋め草やから重要やないんやないか、と言われると、なかなかそんな事もないんで、なんらかの形で振り返れるようにします。