鍵のかかったドアへ
僕は君が嫌いだ
ナイフでも、銃でも
スレッジハンマーでも、ロケット推進擲弾でも
物理法則を無視したあらゆる武器でも
世のものならぬ黒魔法でも
人間の頭だって粉々にできる超パンチでも
ビクともしない君が嫌いだ
現実ならこの私の脆弱な身体で
君を蹴り飛ばし、ぶっ倒し、こじ開けるところだが
この壮大で逃避的なビデオゲームの世界ではそれができない
それが嫌いだ
よくあることだが、まともな障害物や難所を考えられないゲーム開発者が
とりあえずなんとなく君を置いてみるのが嫌いだ
またしばしば、君が実はドアですらなく、
単に壁に描かれた模様であったりするところが嫌いだ
「反対側から固定されているようだ」「ここからは開けられないようだ」という台詞を
まるで神に言われたかのように、すんなり開けるのをあきらめる自分が嫌いだ
ガチャガチャとかガッチャンとかアッオーとかいちいち音を出すのが嫌いだ
鍵とかスイッチとかがいつもたいへん離れた場所にあるのが嫌いだ
お前を開けられるかどうかごときで世界の命運が決まったりするのが嫌いだ
あらゆるゲームのあらゆる場面で押しまくったせいで
キーボードの「E」キーの塗装がはげかかってるのが嫌いだ
お前のせいでざっと数百時間、もしかしたら数千時間が
僕の人生の総プレイ時間に無駄に加わってるのが嫌いだ
お前がムカつくあまり既に200語以上イタい泣き言を並べている
そういうのが嫌いだ
鍵のかかったドアへ、もしお前が存在しなかったら、
僕たちの知っているビデオゲームは全く根本的に違っていただろう
鍵のかかったドアへ
僕は君が嫌いだ
Locked Door, I Hate You (Alec Meer) http://www.rockpapershotgun.com/2009/04/21/locked-door/