ファイナルファンタジークリスタルクロニクルエコーズオブタイム


タイトルは釣りです。

世のサラリーマンたちが休日を謳歌している頃、勤勉さが肉をまとったような私は今日も一日日本の社会経済を支えるがため会社で座っていたわけですが、そんな良き労働者の鏡がごとき私が一日の恵みのような労働を経て豊かな地域生活を育むために帰宅を

やりなおし

今日も仕事だったが、職場からの帰りでいつものように埼京線のホームに立ってたら旅行中らしき白人の若いカップルが路線図と時刻表でにらめっこしながらしきりに互いに相談していて、やがて回りをキョロキョロ見回し僕と目が合った。と同時にホームに列車が入ってきた。

"$$$ $$$ local $$$?"
たぶん各停なのかどうかを聞いている

"あーWhere are you going?"
デイブマシューズバンドの「Where are you going」という曲を良く聞いていたため、
僕のWhere are you goingの発音は天下一品だ

"$$$$ going to here"
女性が指した駅名「北与野」そんな知らんよどこだそれ
ドアが開いた

"$$$ $$$ local $$$?"
男の方が再び聞く、まあ各停なのは間違いない
ドアが閉まってしまう!

"あーイェスイェス、ローカルローカル、オッケオッケ"
ぐっとカタカナ英語になった僕、二人はサンキューサンキュー言いながらみんなで乗りこむ
オッケオッケ、ミッションコンプリートだ!

しかし新宿で降りて気付いたのだが事は全然オッケオッケじゃなかったのだ、各停は各停でも僕らが乗ったのは高崎線直通湘南新宿ライン籠原行きであり、北与野に行くためには同じホームで発車する埼京線の各停に乗らなければいけない。

カップルは席をとってリラックスしきっていた、おそらく今ごろ僕の話で盛りあがり「道を聞くだけでなく、ついでに一緒に写真も撮ってしまいたくなるようなナイスガイだった」という話をしているに違いない。嘘をつかれているとはとうてい思っておらず、このままでは間違いなく籠原に着いてしまう事だろう。

籠原は良く知らないが埼玉だし、おそらく地の果てに等しい、蛮族やモヒカンの跋扈しているあらくれの荒野に違いない。それを、うっかり北与野に来たつもりの無防備な旅行者たちにのこのこ行かせてしまうなんて!このままでは取り返しのつかない事になってしまう!

しかし電車は行ってしまったし携帯番号とか知ってるわけでもないので、取り返しはすでにつかなくなってしまっている。どうしようもないのだがそこは一日350万人の新宿駅であり、とりあえず駅の人にかけあってみることにした。

「どういったご用件でしょうか」
「あのー、すいません、さっき、その湘南新宿ライン、……出ちゃったじゃないですか」

あとから思うにこの切り出し方は最悪だと思うのだが、さすが350万人の新宿駅員はこの程度の挙動不審さではビクともしない。どうにか事情を伝えたところ、すぐさまどこかに電話をして、話を伝える。「名前とかわかりますか」「名前はちょっと、一番前の車両です」するとまたしばらく向こうと話をして、「今駅の車掌に伝えましたので大丈夫ですよ」と言ってくれた。車掌か駅員か記憶が曖昧だが、すごい連絡体制だ。

おそらくカップルは北与野に向かっていると思って疑っていない所、ドアが開いて駅員だが車掌だかがドカドカやってきて「君たちが向かっているのは北与野ではない、今すぐ降りなさい」なんでこいつら俺たちが北与野に行くって知ってるんだ?そんな感じでたいそうおののく事であろうが、籠原に着いてしまうよりはましであろう。ともかく何事も言ってみるもんだと思いながら家に帰った。

そんなわけでこのような立派な事をしたのでほめてください。

(二〇〇九年二月)